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(一年後)
その日も台風が近づいていた。
川はすでに増水し始めていた。
先に庭の物音に気がついたのは女房だった。
庭へのガラス戸を開けてみた。
何もいない。
でも女房はあきらめなかった。
女房は雨交じりの風の中、庭へ飛び出した。
「ああ!」
女房の声のするほうへ行ってみると
庭の片隅にうずくまっていた、あの子が。
帰ってきた!あの子が!
私は女房と手を取り合って喜び、あの子を家へ入れた。
「どこへ行ってたの?」
お風呂で女房はあの子の背中を洗ってやりながら聞いたが、答えはなかった。
それからまたあの子と私たちの三人暮らしが始まった。
女房はみるみるうちに元気になり幸せそうだ。
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