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私たちは今日、この学び舎を去る。卒業式を無事に終え、後は帰るだけ、となっていても、皆なかなか帰ろうとはしない。抱き合って泣いたり、写真を撮ったり、黒板に書かれた「3-1 祝 卒業」の文字の周りに各々思うことを自由に書いたり。いや、私だってその中の一員だ。さっきだってクラスの中心人物の香織ちゃんから写真撮ろうよって言われたし。私だってこの瞬間、皆に混じって「卒業」というイベントをこなしている。
私はわかっていた。今私がしなくてはいけない「卒業」とはいったいなんなのか、が。
教壇に向かって1歩1歩進んで行く。
黒板の前に立つ。愛しい君の横を通りすぎて。
普段皆の前に立つなんてことはしない私の姿に、クラスは静寂で包まれる。
…結局、愛しい君に思いを伝えることはできなかったな。
「みんなには黙ってたんだけど、春から留学するの。今までありがとう。」
君からの卒業。
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