一章

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マリアンヌはオルゴールを化粧台に置いて食事を受け取った。 シチューを一口すすって、ラファエルめがけて吹き出す。 「うわっ。きたなっ」 ごしごしと袖で顔を拭くラファエルを、マリアンヌは腰に手を当てて追及した。 「バカ!  なによ、すっかり冷めてるじゃない」 「だって受け取りに行ったときにはもう……」 「温め直すくらいの芸当は出来ないの?」 「お腹を空かせてると思って……」 「言い訳はうんざりだわ。  それでよく私の世話なんかできるわね。  さっさとストーブで温め直して」 オーナーや、観客の前で見せる口角の上がったマリアンヌの愛らしい唇も、ラファエルの前では文句しかついてこなかった。 「次にやったらガーナムに言いつけるからね。  この仕事が惜しいならもっと努力しなさい」 つんとマリアンヌはラファエルに背を向けて化粧に向かってしまった。 ショーの時以外は誰にも見せることのない顔にメイクを始める。 エレーナの檻ではいまだマレーグマたちがレモネードを巡って騒いでいた。 マリアンヌが怒る。 「にゃーにゃーうるさい!」 レモネードを賭けた仁義なき戦いに、エレーナは反論した。 「にゃーにゃー言うにゃーっ!  一大事にゃー!!」 「ふん」 マリアンヌはもうこちらには目もくれない。 ラファエルはマノンと肩をすくめあって、シチューを温めてマリアンヌに渡すと急いで奥の檻に向かった。
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