正体

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家に着くと凌は何も言わず車から降りていった。 私も何も言わず車から降りドアを静かに閉める。 会話の無い2人。 「…鍵」 沈黙の中、一言だけ凌は呟く。 「あっ…」 カバンの中から預かっていた鍵を渡すと凌はそれ以上、何も言わず鍵をあけスタスタと中へ入っていた。 私も後に続き中へ入ると凌はリビングにあるソファーに寝転がっている。 無言に耐えられなくなった私は 「なんで黙ってたの?」 と疑問を投げかけた。 凌はゆっくり私を見ると 「言えなかった。」 そう答えて、また目を逸らす。 「なんで…?」 「お前が…暴走族が嫌いって言ってたから…バレたら嫌われると思った。だから昔の事は言わなかった。」 そうだったんだ… 凌が過去を話さないのは私のせいだったんだ。 「ごめん…」 私は呟いた。 凌はゆっくり体を起こすと 「もう嫌いになったんだろ?」 真剣な眼差しで私を見る。 嫌いになる? なるわけがない。 凌が暴走族だったとしても私は凌が好きだ。 それに、暴走族に対しての イメージは大きく変わっていた。 みんな良い人ばかり… 楽しくて…仲間思いな人達。 逆に羨ましかったぐらい。 「嫌いになんてならないよ。私は凌が好き…。それにみんな良い人だったし…」 そう笑顔で答えると 凌は「ありがと…俺もお前が好きだ…」と照れくさそうに微笑んでいた。
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