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そんな事ばかり考えているとアッと言う間にアパートが見えてくる。
いつものように駐車場に車を停めいつものように車から降りると私は凌に電話をかけた。
「凌~♪着いたよ!」
そう言えば扉がカチャッっと小さな音をたてて開く。
私の目の前には少し痩せた凌の姿
「早かったな!」
ニコッと笑いながら凌は私を部屋へと招き入れた。
「お…お邪魔しま~す…」
違和感…
つい1ヶ月前までは【ただいま】と言っていたのに…
もう私の家ではない―…
そう思うだけで私は身勝手な事が出来ずキョロキョロと部屋を見渡していた。
「何してんだ?そんな所に突っ立ってないで座れよ!お前が住んでいた頃と何も変わってないぞ?」
確かに何も変わっていない。
一緒に買いに行ったソファーやダイニングテーブル―…
全てが同じ場所に存在している。
カーペットには私が付けたココアのシミもそのままあって…
私がこの部屋にいた証が残っている。
だけどね…
この部屋は変わってしまったよ。
もう、ここは私の家じゃない…
本当ならば今のこの部屋に私と言う人間が存在してはいけないのだ
それに…
ここにあった写真は?
初めて2人で撮った写真が無いじゃない?
今は楽しそうにハシャいでいる凌と明里ちゃんの写真が貼ってある
分かってるよ。
仕方がない事だって…
当たり前の事だって…
ただ私の存在が薄れて行く事が嫌なだけ。
思い出の1つになりたくないだけなんだ。
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