9人が本棚に入れています
本棚に追加
フッとダイニングテーブルに目を向けるとそこには【幸福の木】が寂しそうに置かれていた。
引っ越しをしたばかりだった
あの頃―…
家具や調理器具など暇さえあれば2人でよくでかけていたあの頃の2人には、数年後こんな結末を迎える事になるなんて想像すらしていなかった。
凌が買っても良いと言ってくれた【幸福の木】は今にも枯れそうで…生き抜くために必死でモガいている。
「凌?幸福の木…枯れそうなんだけど…」
幸せになれる様に願って買った幸福の木。
「あぁ…水やってるのに最近ダメになりかけちゃってさぁ」
願いは叶うことなく…
「捨てたら?」
枯れて行く。
「いやだ!」
だが、それでも凌は捨てる事などしなかった。
「ふ~ん。なら太陽に、こまめに当ててあげれば元気になるかもね?」
だけどね…凌?
一度ダメになってしまった物は簡単には元に戻らないんだよ?
私達だって同じだよ?
簡単には戻れない。
「太陽かぁ…よしっ!明日、太陽に当ててみるよ!」
そう凌は笑顔で答えていたが、そんな努力も虚しく幸福の木から新たな芽が出ることは、この先もずっと無かったんだ。
最初のコメントを投稿しよう!