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「だったらさ、逃げる必要なんてなかったんじゃないの?」
「ううん、そんなことないよ。……でもね、ある意味それは当たっているよ。そう、あたしらがそこにいたって事だけはしらせなくちゃいけなかったの」
シャーロットはやっぱり何かをたくらんでいる。わたしはそのことを確信した。
「……もしかして、そのことを利用して何かをやろうとかしていたりしない?」
率直に訊ねてみた。
すると、シャーロットは朗らかな様子で宙を見たままに、こくんとうなずいた。
「まあね。そんなところかな。でも、あの人たちに積極的に攻めていくほどあたしはそんなに悪い子じゃないよ」
シャーロットの説明をまとめると、こんな感じだ。二人がやっていたことについては誰にもしらせない代わりに、シャーロットがいつの日か悪さをしたことがばれて追いつめられたその時に、味方になってもらう、と。そのためには、まず相手の弱みをしっかり握り、そのことを自覚してもらわなければいけない。あくまで裏約束に留めることが前提なので、
何度も交渉に出ていくようなことはしないから、暗黙の了解を取るつもりでいるのだった。
すべては彼女自身のためだ。
シャーロットはもっと自由に走り回りたいっていう希望を持っていて、それを存分に叶えるために、わざとこんなことをやったのだ。
「もしかしてわたしを利用したってことなの?」
わたしは結果的にはそういうことになるんじゃないかと気づいて、問いかけた。シャーロットはけろっとした顔のままでいた。
「そんなことないよ。でも、正直なことを言うと、半分は当たっているのかも。だって、あたし一人じゃ、こんなことはできなかっただろうし、やらなかったと思うから。だから、おわびになんでもやるよ。好きなこと言って」
いきなりそう返されても困る。だいたい、わたしはものを欲しがるような性格ではなく、おかあさんに無理をお願いしたようなことは一度だってなかった。
「ううん、それはいい。わたし、何もしてもらわなくってもだいじょうぶだから」
「それは、だめだよ」
シャーロットは口先をきゅっと尖らせて、叱るように言う。
「だって、何もたのむことないもの」
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