3章(途中)

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   私はなにかを言い返してやりたいところだったが、なかなか言葉が出てこない。気持ち的には挑んでいくだけの意気があるのに、頭の方が追いついていない。      透ヶ川刑事は扉を閉じた。そして、二階中央の円型の穴に取り掛かる。木蓋を取り寄せ、ゆっくりとスライドさせて穴を閉じる。     「では、どこで殺されたのかとなると、屋外……そういう選択もあるでしょうが、それだと死体を運び入れるのが大変になってきますから、やっぱり屋内しかないんです。つまり、ここ二階しかなくなるんです。それで浮上するのがこの木蓋の上です」      彼は腕を使って円を作る。木蓋の範囲内で殺人が行われたと暗に示しているようだ。      私は首を振った。     「それだと問題点が出てくることになります。二階は天井が低いですから、リングとの距離も近くなるわけでして……。こうなると、凶器が威力を発揮してくれませんよね?」      二階の天井は、そう背が高くない私でもつい頭を低くしてしまうほどに低かった。それぐらいだったから、その中央に取り付けられたリングを使ったところで、凶器が威力を発揮するはずもない。透ヶ川刑事の新見解は明らかに間違っていた。     「それは、たいした問題じゃありません。同じ原理を使用すればいいだけのことですから」      と、透ヶ川刑事はけろりとした顔つきで答える。リングに注目し、尖ったのど仏をさらに押し上げるように首を上向ける。     「仰る意味がよく分かりません」      と、私は突き返した。     「あれですよ」      と、彼は天井の一部を指差した。リングからは少しずれた位置。そこは、天井が破損した大きな穴があるところだ。私がそこだと理解したのを見届けるなり、彼の手が下りた。     「分かりませんか?」      と、問いかけてくる。     「……何かあるんです?」      彼はもう一度、天井を見据えた。     「穴の向こうは、骨組みになっています。屋根裏部屋みたいな感じです。それは見えなくともイメージできると思うんですが、もし、天井にあるものと同じリングが骨組みの梁に取り付けられていたとしたら、どうでしょう。そうしたら、凶器の問題が解決されると思いませんか? 二階のリングを使ってやるのとまったく同じ原理でやるんです。ほぼ再現するようなものだと思ってもらっていいですよ」
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