315人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
しっかりと肩を掴んだ手は、とても
振りほどけそうにない。
「だめだよ、もう暗い。こんな所に君を
一人で置いて行けるはず無いだろう」
そう言う間にも、幸がさっき通ったばかりの
ホールを、どんどん引っぱって歩いて行く。
なんで?
どうして?
こんなはずじゃ無かったのに。
幸は何度も、心の中で叫ぶ。
一方、
ホワイトデーのプレゼントは、
どのタイミングで渡すかな。
そんな事を考えながら、喜びに有頂天の男は、
意気揚々と人気の無い廊下を進んで行く。
可愛い彼女の肩を、初めて抱いた幸せを
かみしめながら。
ハテナでいっぱいの、幸の胸の内には
気付きもせずに。
END
最初のコメントを投稿しよう!