第1章

5/5
前へ
/5ページ
次へ
おかしいと思っていた違和感もすべてがクリアになった。 この部屋は私達が暮らしてきた部屋ではない。 私が記憶喪失になったことを良いことに、引っ越して以前のことを まったく思い出せないようにしていたのだろう。 りょうたの遺影すらも、ここにはない。 すべてを無かったことに。 あなたはそんなに自分を守りたいの? 私はあの日のように、台所にふらふらと歩いて行った。 「あなた、最近ね私何かを忘れていたような、大切な何かを忘れていた気がして。 どうしても思い出せなかったんだけど。今、やっと思い出したわ。」 包丁を握り微笑む私を、主人が驚愕の目で見ていた。 
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加