オカンとボクの二人三脚

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「『いちねん さんくみ にしかわ すぐる ぼくのおかあちゃん ぼくのおかあちゃんは、めっちゃあかるいです。 トイレの電気のしたの、おとうちゃんのツルツルあたまより、あかるいです。 ぼくが、しんどいちゃうんかなあと、思うときも、めっちゃあかるいです。 わらうと、もっとあかるいです。 ぼくは、おかあちゃんに、ずっとわろうていてほしいなあておもいます。』」  授業参観でぼくが読み終わった瞬間に、爆発音のような拍手が教室全体に鳴り響いた。  クラスメイトの竹田くんや美代子ちゃん達が驚いて振り向くと、拍手をしているのはぼくのお母ちゃん一人だけやった。 「いややわっ! すぐる! おかあちゃんの事、そないな風に思うてくれてたん!? おかあちゃん嬉し過ぎて泣きそうやわ! みなさん! 聞きました!? ウチのすぐる、ええ子でしょう!! 天使みたいな子でしょう! もうここまで来るとほんまの天使ですわ!」  いつの間にか教室の真ん中まで進み出ていたおかあちゃんは、いつまでもぼくに称賛の拍手を贈った。  周囲の温度差など、何も気にせずに。 「ーー思えば、あの時からやなぁ……」 「何が?」  小さいボロアパートのこの一室が、僕、西川 (すぐる)のすみかだ。  風呂もない激安アパートに、うっすい布団をしいて僕は一服しながら隣の彼女と同様、裸で寝そべっていた。  まあ、つまりはコトの後と言う事です。  僕の顔の横には、丸めたティッシュと灰皿と、今日のライブのポスターがしわくちゃになって転がっている。  ライブ言うても、カッコいい歌を歌うバンドなんかやない。お笑いのライブや。  小学生のころからのツレの竹田くんと、「ハバネロクラッツ」というコンビを組んでいる。  劇場では定期的に見に来るファンもぼちぼち着いて、メディアに出るまであともう少しっちゅう感じだ。  ちなみに隣の彼女も、今日のライブでお持ち帰りをしたファンの子だ。 「ねぇ。優はいつもファンのお持ち帰りしてんの? 『思えばあの時からやなぁ』って、初めてお持ち帰りした日の事言うてんの?」  少し崩れた化粧で隣の彼女は意地悪く笑う。  その笑顔を見ながら「んな訳ないやろ? ボクのハジメテは君や」と鼻先にチュッとした。  可愛い子や思うたけど、コトが終わって冷静に見ればそうでもないな。  しかしジェントルメンな僕はそんな事は口に出さない。
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