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仕方なしにパンツを履いて起き上がり、ノートを引っ張り出してオカンの脇でネタを考える。
「……優な、あんまりファンの子らに手ェ出したらあかんよ」
「何でよ。合意の上や」
「下手に怒らせてみぃ? もうチケット買うてくれんくなるよ」
「そうなったらそうなったでしゃあない事や。
オトコとオンナの情事や」
僕の答えに、オカンは「あかん!」と言うて丸太のような自分の膝頭をピシャンと叩いた。
「ファンの子らには、ごっつ優しくせんとあかんよ!
あの子らはな、あの子らは
ハバネロクラッツの大事な金ヅルや」
「言い方がエグいわ」
そんなこんなを言いながら、オカンは掃除洗濯をし、今日の舞台のダメ出しをした後にそそくさとオトンの待つ家へと帰って行った。
入ってきた時同様、扉が変形しそうな勢いでバタンと閉めて、地響きと共にオカンの形跡が薄くなっていく。
「ほんまに……少しは子離れしてほしいわ……」
綺麗に片付けられたテーブルには、僕の吸うタバコが1カートンと、好物の紅生姜の天ぷらと豚まんが残されていた。
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