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その勢いで横座りに倒れて振り向くと、オカンは仁王像の様に立って、どついた自分の方が痛かったのか手のひらをさすっていた。
「すぐるっっ! なんも演りもせんとグチグチグチグチ女々しいわっ! ウケてもウケんでも、せっかくチャンスを貰ぅたんや! 気張ってやって来ぃ!」
「……そんなん、分かっとるわ!!
せっかくのチャンスを頑張らん訳ないやろ!
めっさ頑張ってくるわ!」
売り言葉に買い言葉で、僕は立ち上がってオカンと睨み合った。
小さい頃はオカンの方が大っきかったのに、いつの間に僕はオカンを追い越したんやろ。僕を見上げて睨みつけるオカンは、叱りつけるような声で僕に言った。
「おかあちゃん、待っとるからな。
ハバネロクラッツがブラウン管の向こう側に出る日まで、応援してずっと待っとるからな!」
「おかあちゃんち、60インチの液晶やんか」
「うっさい。 ブラウンか液晶かなんか、どっちでもええ。
とりあえず、気張っていき。」
「……おぅ」
そのまま尻つぼみに会話は終了し、僕は明日の上京の為に早めに床についた。
しかし、僕はよう寝付けんかった。目を閉じて明日のイメージトレーニングをしてみるも、なぜか出てくるのは爆笑しながら拍手するオカンの姿やった。
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