夜の顔

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目の前には二十代半ばほどの男性が立っていた 男性はとても整った顔をしており、10人に聞いたら10人が美形と言うだろう そんな彼はにこりともせずにこちらを見ている 「よう、クロ。今日は遅かったじゃねーか。入学式じゃなかったのかよ。」 俺はここで、本名である龍玄(リュウゲン)の玄を取ってクロと呼ばれている そして俺をクロと呼んだのは、今では親代わりになっている有川栖翁(アリカワスオウ)だ 有川は余り笑うことは無いが、表情は豊かだと思っている 今も仏頂面であんな事を言っているが、中々来ない俺を心配していたのは分かっている だから安心させるように今日の出来事を話すんだ 「ああ、今日は入学式だった。暇だったから少し部活を覗いて来たんだ。」 俺の言葉に有川は安心したようだ 表情が少しだけだが弛緩する 俺にしか分からないような極僅かな変化だ 「そうか。だが、クロ明日からここでバイトするんだろう。大丈夫なのか?」 その言葉に俺は、大丈夫だ、と言うように軽く手を上げた .
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