夜の顔

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高校でも部活に入るつもりの俺は、部活の後にバイトをすることになるだろう 有川は、俺の体力を心配して“大丈夫なのか?”と聞いて来たんだ 体力には自信があるし、元から不眠症の俺は余り寝なくても問題無い だから中学の頃とか部活の後に繁華街来るなんていう暮らしが出来たんだが 「大丈夫だ。それより今日は奏(カナデ)と有菜(ユナ)遅いな。仕事が忙しいのか?」 奏と有菜は俺の数少ない友人だ 歳は離れているがかなり仲が良い 休日に有川を入れた四人でよく遊びに行くほどだ 俺の言葉に有川は素っ気なく言う 「知らねーよ。それより今日は誰にすんだ、相手。」 有川の問いに俺は笑みを溢した その笑みは学校で見せている様な爽やかなものとは似ても似つかないものだった 獲物を狙う獅子の如く獰猛なそれは、見る者を思わず後退りさせる様な迫力があった しかしその瞳には輝きが無く、暗い闇を光の変わりに灯していた 「そこに座ってるやつ。あいつとは久々だが大丈夫だろ。」 席を立った俺はそいつの所に一直線に向かって行く 男は俺に気づいたのか此方を振り向いた 丁度目の前に着いた俺は自身の身長よりも10センチ程小さい彼の顎を指で上げ、顔を近づける 耳元に顔をやると、少し掠れた艶やかな声で囁いた 「この後の予定は?勿論空いているだろう?」 嬉しそうに頷く彼に俺は小さく笑うと頬を撫でた そして共にバーを出るとホテル街の方向に歩いて行った .
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