日常

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練習が終わるといつも通り着替え体育館を後にする 今日は点検の関係で残ることが出来ないらしく、いつも自主練している先輩方や同級生も早々に後片付けをしていた 誰よりも早く着替えた龍玄は急いでいると思われない程の早足で校門に向かう 数メートル先に見えた校門には予想通りの2人が雑談をしながら立っていた 部活帰りであろう数名の学生が遠巻きに2人組の様子を窺っている 美しい容姿の2人はとても目立つ 談笑していた2人は校門に向かう龍玄に気がつくとそれぞれ顔を上げ笑みを浮べた 長く綺麗な濡れ羽色の髪をなびかせている気の強そうな顔立ちの彼女はニヤニヤと意地の悪い笑みを浮べ、ふわりとミルクティー色の髪を耳にかけながら微笑む彼はにこにこと楽しそうにしている 「やっほー。迎えに来ちゃったぁ。もしかしてクロ怒ってるぅ?」 甘ったるい独特な喋り方をする奏は可笑しそうにこちらを見る 「ふふ、まさか。怒ってるように見える?急だったからびっくりしただけだよ。」 からかっているのが丸わかりの2人に対し内心舌打ちをしながら苦笑いを浮べた 気の強そうな眼を細めくつりと笑った有菜に視線を移す 「中学生の頃から変わらないな君は。相変わらずのようだ。そんな所が面白い、いや可愛いのだがな。」 挑発するように、からかうように、意地の悪い笑みを浮かべる彼女に呆れを隠しながら微笑みかける 「高校生でこんな長身の男にむかって可愛いなんて言うの有菜くらいじゃないかな?」 その答えに何が可笑しいのか有菜は笑みを深めた 「くく、まあ何が言いたいのかはわかっているだろう?」 どうせ学校でのこの人物像が本性とかけ離れているのが面白くてしょうがないのだろう 表情からうかがえないその内心を想像し可愛らしいとからかっているだけだ 「ちゃんとわかっているよ?」 龍玄のその答えに満足した様子の有菜は奏に視線を移す つられて龍玄も奏を見ると、彼は顔を近づけ耳打ちしてきた 「早く帰ってアリス行こー?」 その言葉に笑みを崩さず頷いた龍玄は2人に声をかけ歩きだす 機嫌の悪い龍玄を見た2人が学校生活を心配し様子を見に来たことは龍玄もわかっていた まあ、半分以上はからかいに来ただけだったが それも含め2人のことは不快では無くただ、そのことを素直に認めることは癪だった龍玄はどう仕返ししようかと考えていた
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