小倉 龍玄

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話を聞くと彼はこの近くのバーのオーナーであった そのバーは男性や女性の同性愛者とバイセクシャルの方が集まる場所らしかった そこの常連の中にも俺に抱かれた人がいたらしい その人が俺のことを妙に気にかけていたためオーナー自ら様子を見に来たんだという “どんな奴かと思ったら、酷い眼してやがるし、どんな人生送ってんだよ” その言葉に俺は静かに涙を流した ぶっきらぼうなのにも関わらず、相手を心配しているような、そんな声 今まで押し込められていた何かが、決壊した様に溢れだして止まらなかった いきなり泣き出した俺にオーナーは焦ったのか、俺の手を掴んで歩き出した 連れてこられたのは、バーにある従業員用の控え室だった そこで彼は静かにお茶を出してくれた 何も聞かないでいてくれる彼の優しさはとてもありがたかった 落ち着いてきた俺は、気づくと自分のことをぽつりぽつりと話していた 話を聞いた彼は年齢の部分でとても驚いていた 大学生位だと思っていたらしい 全て話終えると彼は頭を撫でてくれた そして一言、頑張ったなと言ってくれた 本当はいけないが彼はバーに来ることを許してくれた 毎晩バーに通いオーナーの有川 栖翁(アリカワスオウ)と話をした 有川との会話はとても気楽で楽しかった だが人を抱くのはどうしても止められ無かった .
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