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こんなものをなぜ、透ヶ川刑事はもっているのだろう。こういうのはプライベート写真のはずだ。まず家族以外に持っているはずがない。あるいは、母を追求する振りをして私をしっかり見ていた透ヶ川刑事のことだ。あらゆる方面で、私の情報を求めて回ったのかもしれない。すると、写真の内容からして生き別れになった私の父と接触し、その父から提供してもらったのではないか……。
「これには、何かあるんですか……?」
と、私は出所なんて無視して、透ヶ川刑事に問う。
「もしや、と思ったんですよ。あなたが言うシャーロットさんって、その子だったりしませんかね、……どうでしょう?」
どきっとした。そして、私は腕の中に抱かれた人形をじっと見据える。ビスクドール。絹のドレスをまとった、七歳ぐらいの男の子のような女の子。ぽてっと太った頬を心持ちつり上げつつ、きょとんとした具合に上を向いている。サテンのリボンで髪を束ね、同じ素材で上履きを固定する紐にしている。
目だ。
特徴的に描かれたまつげに縁取られた、大きな目。私を呑み込んできた、目。とび色で、遠くにある惑星のような奥ゆかしい輝きを放つそれは、私が知っているシャーロットと同じものだった。
どくん、と私の中で跳ね上がった心臓の音が響く。そして、シャーロットとの思い出が次々に、現実的な記憶にすり替えられていく。
あれもこれも……。
全部、この子だった。
私は、いつもこの子を連れ回し、いつも一緒に遊んできたのだ。傍にいたのは、たしかにこの子なのだった。
蓮見先生が前にのめって私の顔をのぞきこむように見る。
「どうやら、何か思い出したことが出てきたみたいだね。止めないで。どんどん思い出して。そうしてあなたの中の歪みを補正するんだ。あなた自身の力でだよ。それでようやく正しい人格が組み立て直されるんだ」
思い過ぎるのは、私が鳴海に乱暴されたときのことだ。あれは、私だったのだ。一人で遊んでいるうちに、相変わらず女性に乱暴を働いている鳴海についちょっかいを出したくなった。
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