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一方、『切り札』の猛攻に合わせるように、それ以外の敵機が一斉に前進を始める。
流石に、エーリッヒ一人では敵を完全に止め切る事は出来ない…これでは、他の宇宙、世界の救援どころではない。
「く…このままでは…!」
エーリッヒが冷や汗をかく。
…まさか、こんな事になろうとは。信じ難く、そして、認め難い事だった。
しかし、現実、目の前にある状況を覆せる要素はない。
ならば、今すべき事を。エーリッヒは、修理、補給を行っていた騎士団へと連絡を入れる。
「騎士団諸君に通達…全機、死ぬ気で民の脱出の時間を稼ぎ、民の命を…我が国の宝を守れ…!!」
騎士団の、部下達の命は大切だが、それ以上に、守るべき民の命は大切だ。
「エーリッヒ、良い判断だよ…!」
イセリナは、そう言って寂しげに笑いながら、言葉を続ける。
「今の戦況を考えれば、最悪の状況は想定しておかなきゃならない…けど…!」
攻撃を受け流しながらも、ジオカイザーが機体各部を展開する。
反撃の隙が無いなら、強引に作り出せばいい。リスクは大きいが、今残された手段など、それくらいだ。
「このままじゃ、終わらせない!ジオ・バァァァァァァァスト!!!!」
内装火器である光学誘導弾の一斉射撃…これならば。
しかし、発射の直前、『切り札』の胸部の砲門に、光が灯った。
「なっ!?」
『切り札』は、高速で後退し、胸部の大きな砲門から、光弾を連射する。
放たれた光弾は、まるでそれぞれが意思を持っているかのように弾道を自在に変え、
ジオカイザーが放った光学誘導弾を尽く掻き消し、そのままジオカイザーへと同時に襲い掛かった。
ジオカイザーは、大斧でそれを防ごうとするが、『切り札』の放った光弾は斧の振りの範囲ををするりと回避し、ジオカイザーへと直撃する。
「…う、ぐ…!」
落下するジオカイザーに、『切り札』が続けて放った光弾が、ありとあらゆる方向から更に追撃をかける。
「そん、な…っ!!」
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