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「イセリナ様!!」
エーリッヒが、敵を強行突破して、『切り札』へと斬りかかろうとする。
しかし、放たれる光弾の一部が弾道を変え、エーリッヒの乗機へとその矛先を向ける。
「ぐおあああああああああ!!!」
二人とも、この敵の圧倒的な強さに、『彼女』の姿を思い出していた…いや、思い出さざるを得なかった、と言った方が良いだろう。
特にイセリナは、『彼女』を助ける為に、仲間達と共に、一度だけこのレベルの敵と対峙した事がある。
その時は、ジオカイザー最強の武装である斧すらも破壊され、『彼女』救出の時間稼ぎをするので精一杯だった。
敵の素性はどうあれ、少なくとも、今対峙している敵の力が『その領域』にある事は紛れもない事実だ。
…そして、もう一つ、イセリナが気付く。
敵は、今になるまでこの武装を使わなかった。
しかし、敵の出力、その完成度を考えるなら、リスクによるものであるとは考え難い。
…理由は分からないが、敵はまだ、全力を出してはいない。
それでこの状況なのだ。
…残念ながら、もし敵が本気を出したならば、今の戦力ではどうやっても対応できないだろう。
満身創痍のジオカイザーが、地面へと落下する。少し遅れて、エーリッヒの乗機も、地面へと叩きつけられた。
『切り札』はそれを確認すると、他の敵機を追って帝都への移動を開始する。
「待、て…!!」
ジオカイザーが立ち上がり、『切り札』を追う。
「せめて、時間稼ぎくらいは…!!」
エーリッヒの乗機が、ジオカイザーに続く。
可能な限りの人々を避難させねばならない。せめて、時間を稼がねば。
しかし、通常の空間で使用可能な最大推力を行使したジオカイザーすらも、『切り札』の速度に追いつけない。
帝都の迎撃武装が稼働を開始し、騎士団もまた、敵との交戦に突入する。
帝都付近での空中戦だ、物的被害、それが更に悪化すれば、今度は人的被害が出るだろう。
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