プロローグ 黄金の翼の女神

4/28
前へ
/90ページ
次へ
プロローグ 黄金の翼の女神 豪華な装飾がなされた宮殿の一室で、一人の少女が、コンピュータの端末と睨み合いをしていた。 「駄目だ…やっぱり完全に音信不通、か…」 少女は、ため息をついた。 コンピュータの画面には、世界、宇宙、そして、その起源を同じとするそれらの集合体『宇宙群』の配置を示す図が表示されている。 現在地を示すマーカーから少し離れた場所の、別宇宙群の座標を示すマーカーが、灰色で表示されていた。 元々、たとえ隣接した宇宙群であっても、宇宙群を越えての通信は難しいが、今回は直接通信どころか、完全に音信不通なのだ。 「…一体、何が起こっているの…?」 少女が、色々なルート、波長を試しながら、暫く端末との睨み合いを続けていると、別な場所から通信が入る。 「こちらアルフレッド。イセリナ様、何か情報は掴めましたかな?」 アルフレッドと名乗った通信の主は、六十代後半の男だった。 「…アルフ、か…」 イセリナと呼ばれた少女は、お手上げのポーズをしてみせた。 「はは、残念ながら何も…ただ、確実なのはこっちの通信機、観測機の故障ではない事、空間の不安定さによる障害ではない事、かな…つまり…」 アルフレッドは、静かに頷く。 「…少なくとも、向こう側で何かが起こった事は間違いない、と」 「うん…もっとも、起こっているのがどんな事なのかは全く分からないんだけどね。 元々、超長距離通信には障害が多いし、そもそも、もっと離れている宇宙群との中継なしの通信は私たちの技術でも不可能だし。 それに、そもそも『旅人』って、元々の私達みたいな連合を除けば基本的に単独行動だから、長距離で連絡を取り合う事自体が稀だし、ね」
/90ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加