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そして、その日の晩の事だった。
宮殿の中の、自分に宛がわれた豪華な部屋で寝息を立てていたイセリナは、突然のアラート音に叩き起こされる。
「…!?」
イセリナが起き、状況を確認する為に、手持ちの端末で通信を入れる。
「エーリッヒ、この警報は一体!?」
通信に対し、軍服に身を包んだ男が敬礼しながら応答する。
「は!正体不明の機動兵器の一群がこの帝都へ向けて進軍中!現在、騎士団が交戦中も劣勢!これから、自分も出撃します!」
今イセリナがいるロートベルグ帝国の首都は、かつて栄華を誇り、宇宙群の創世者を一度は滅ぼしかけた強国ガルデンベルグの首都だった場所だ。
その防衛を担う騎士団が扱っている機体は、その遺産とも言えるものだった。
単独での性能ではイセリナ達の機体には及ばないが、少なくとも、生半可な旅人の機動兵器に後れを取るほど弱くはない…それが、劣勢。
イセリナは、言葉を紡ぐ。
「敵機、私が提供したデータベースにデータはあった?」
「照合結果、完全該当は無し。しかし、近似する技術データにより、機動兵器は宇宙群『ブラックザナドゥ』製と推定…!」
その言葉に、イセリナの表情が変わる。
「ブラック…ザナドゥ…!?」
ブラックザナドゥ…イセリナは、その名を持つ宇宙群を知っていた。かつて、旅の途中に『そこ』に立ち寄った事もある。
…それ故に、その宇宙群製の機動兵器と対峙する事の意味も、良く知っていた。
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