プロローグ 黄金の翼の女神

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戦火が近くなってきた。 騎士団の機体が、交戦しつつ撤退してきている。 かなりの損傷を負った機体も少なくはないが、まだ、全機健在だ。 「間に合って良かった…」 ジオカイザーの手に光が集まり、諸刃の大斧が姿を現す。 イセリナが、騎士団を追撃してきている敵機の一群を睨む。 まるで本体がおまけであるかのような大きさの背部ユニットを装備した機動兵器達だった。 「…成る程、確かにあそこの機体だ」 イセリナは相手の機体の特徴を確認し、静かに頷く。 その宇宙群は、その生い立ち、そして宇宙群が持つ他に殆ど類を見ない非常に特殊な性質故に、境界空間の航行技術が前提条件の如く発達した。 それ故に、地上、空中、宇宙を移動する機動兵器から発展した、他の宇宙群の住人や旅人達が作り出す境界空間航行用の機動兵器とは、 そもそも動力や設計思想が根本的に異なっているのだ。 「騎士団のみんな!こいつらとの交戦は私に任せて、帝都周辺の防衛をお願い!!」 ジオカイザーは斧を構え、後退する騎士団とすれ違うように前に出た。 たちまち、敵機の一部が照準を騎士団の機体からジオカイザーへと切り替えられ、砲撃の雨が、ジオカイザーへと降り注ぐ。 「はあああああああああああああっ!!!!」 ジオカイザーの斧による一撃が、その雨を薙ぎ払う。 「…ジオ・バァァァァァァァァスト!!!!」 ジオカイザーの機体各部が開き、内装された光学誘導弾による一斉攻撃が、敵機体群へと襲い掛かる。 避けきれず、防ぎきる事も出来なかった一部の敵機が爆散する。 更に、その直後、ジオカイザーの後方から放たれた銃弾が、敵機へと突き刺さる。 「遅くなって申し訳ありません、イセリナ様!!これより交戦を開始します!!」 銃弾の主である、鋭角的な装甲が特徴の黄金色の機動兵器が、アサルトライフルを手にジオカイザーの横に並ぶ。 「…我が騎士団があそこまで押される相手…しかし、騎士団長である我が誇りに賭け、ここから先は通さぬ!! 我が祖国を土足で踏みにじる愚か者共よ、己が身の程を知るがいい!!」 その黄金色の装甲が、星の光を浴びて煌く。 そして、エーリッヒの駆る機動兵器が、アサルトライフルを持っているのとは逆の手に、装甲と同じく黄金色の煌きを放つ剣を構える。 「…参る!!」
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