違和感

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店主はこれを聞くと納得したかのように、 腕組みをした。 店は狭くもなく広くもない大きさで、 客は自分達以外、誰もいなかった。 ドアの近くのテーブル席に座り、自分が手前で、 勇気さんは奥に座った。 勇気さんがメニューを開き、自分に手渡す。 「好きな物を何でも頼んでいいぞ。 昨日がバイトの給料日だったから、 何も心配するな」 自分がメニューから選んでいる間に、 勇気さんは二つのコップに水を入れていた。 「はい、これはツバサの水だよ。 頼む物は決めたか?」 そう述べると、水の入ったコップを渡す。 「ありがとうございます。 自分はイケ過ぎラーメンにしようと思います」 こう応える。勇気さんは不思議そうな顔で 「マスター、イケイケラーメンと イケ過ぎラーメンの二つお願いします」 こう述べると、店主は適当な挨拶で応える。 「ツバサ、なぜイケ過ぎラーメンにした? 他にも普通のメニューがあるのに」 勇気さんは訊ねる。少し間をおいて 「メニューを見た時に一番最初に目に付いた のがこれだったんです。 あと、好きな味が思い出せないんです」 自分が一生懸命に説明すると、 勇気さんは笑っていた。 「そうだった。そうだった。 ツバサは記憶喪失だった。 自分の好みを覚えてないか」
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