二人

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朝の陽光に照らされて目を開けると、 自分はベンチに座っていた。 自分が何者で何をしていたのか思い出せなかった。 すぐに自分の身なりを調べるが、 何も自分を証明するような物はなかった。 藁にもすがる気持ちで、近くの男の人に 助けを求めた。 「あの、すみません」 自分が尋ねると、男は振り向くと驚いたように 声を上げる。 「お前、俺にそっくりじゃないか!!」 その声を聞くと同時に、更に頭が真っ白になった。 そんな自分に男は携帯電話で写真を撮って、 自分に見せる。 「ほら、よく見てみろ。俺にそっくりだろ」 確かに、写真の人物は男にそっくりで、顔が細身で 20代前半のように見える。 「お前は俺に何しに来たのですか?」 男は呆れたように訊いてきた。 「実は、自分は記憶がないようなんです。 助けて下さい。」 自分がそう述べると、男は更に呆れた様子で 訊いてきた。 「お前さん。いい加減、俺をからかうのを 止めてくれ」 自分はそれを聞くと、涙がポロポロと流れた。 「お前、マジの方で記憶がないのか?」 男は尋ねると、自分は頭を縦に振った。 「さっきはすまなかったな。 顔が同じというのも何かの縁なのかもしれない。 助けてやるよ」 男はそう述べると、続けざまにこう述べた。 「俺の名前は武藤勇気と言います。よろしく」 武藤さんにつられて名前を述べようとする。 「自分は・・・」 言葉が詰まり、武藤さんが助け船を出した。 「お前はツバサ。そう記憶が戻るまではツバサと 呼ぶことにするよ」 ツバサ、良い名前だと思った。 自分はすかさず訊ねた。 「ありがとうございます。自分はなんとあなたを 呼べばいいんですか?」 自分が訊ねると、武藤さんはこう応えた。 「勇気でいいよ。みんなからはそう呼ばれてる」 「勇気さん、よろしくお願いします」 それを聞いて勇気さんもこたえるように 「任せろ!!」 小さくガッツポーズをした。 ーこうしてツバサの記憶を取り戻す1日が始まった
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