影一つ

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靴を履き終えて外に出ると、勇気さんは鍵を 自分に投げてきた。鍵を閉めろという事だった。 勇気さんは公園とは逆の方向に向かって歩く。 自分もその後に付いていく。 20分程歩くと、住宅街から河川敷に 変わっていた。 空の色がオレンジ一色に染まり、太陽が川の方向 から自分達を見ているかのようだった。 河川敷を5分程歩いた時、川辺に看板があった。 その看板には危険という 言葉がかろうじて見えた。 そうか、これで全てのピースが揃った。 全てを思い出した。 自分の記憶と使命を思い出した。 「勇気、全てを思い出したよ」 「本当か?それは良かった」 ただ、勇気は前を向いたまま、 自分を見ようとはしない。 「自分はドッペルゲンガーなんだよ」 「嘘だ。俺は信じない」 勇気の声は震えていた。 「じゃあ、自分が生まれた経緯を話そうか」 「約2年前、勇気は弟と2人生活をしていた。 そしてある日の夜、弟と勇気はこの川辺の近くで サッカーをしていた。勇気が高く飛ばした ボールを取るために、弟は後ろに下がった。 しかし、残念ながら、弟は後ろの川に 落ちてしまった。川の流れが速く助ける事が できなかった。そして後日、弟が死体であがった」
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