影一つ

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「自分の声は勇気にしか聞こえない」 「思い返せば、確かにお前は俺の後に同じ事しか 言わなかったな」 だから、会話に矛盾は生じていないのだ。 「ツバサ、お前の事を忘れてごめんよ。 お前はずっと前からの友人だった。 お前との会話が俺を立ち直らせた。 俺はお前と過ごせて楽しかったよ」 全てを受け入れたように聞こえた。 勇気の両手を後ろから握り、 体を勇気に寄りかかった。 「大丈夫。安心して。勇気が今日、優しく してくれたように、自分も優しくするから」 太陽が沈んでいく。影は形を変え、やがて一つ になる。その影は翼が生えた天使のようだった。 「今日、1日優しくしてくれてありがとう。 自分の唯一の友達、勇気さん」 言葉を発する事は出来なかったが、 思いは伝わったと信じたい。 太陽が完全に姿を隠し、そして影も消えていった。 これ以降、武藤勇気という人物を見た物はいない
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