13人が本棚に入れています
本棚に追加
カヒムは交換した、期限切れのサービス券を手にして、近くの公園でぼんやりしていました。
日付が過ぎたサービス券、これが世界で一番いらないものなのかな。
ベンチに座っていたカヒムは、深いため息をついた大人の人を見つけます。
大人はくたびれた背広を着て、とても暑そうです。
「はあ」
「どうしたの、おじさん?」
「会社をクビになってしまったんだ……はぁ」
「仕事がなくなっちゃったの?」
「そうだよ……君みたいな子供がいるんだ。3人も、一体どうしたらいいんだろう。ところで君はなにをしてるんだい?」
「ぼおっとしてる。世界で一番いらないものが欲しいんだけど、このサービス券よりもいらないものがあるかなーって」
「ちょっ、ちょっとそれを見せてくれないか……この店は親友が経営している店舗の1つだ。……君、名前は?」
「カヒム」
「俺はジェリコっていうんだ。カヒム、ありがとう!親友を頼ってみるよ……目の前が真っ暗で自分を愛してくれる人を思い出せた!」
「そうなんだ。その券に電話番号書いてあるから、おじさんにあげるね」
「ありがとう……ありがとう」背広の男は涙を流しています。
「じゃあ、僕はこれで」
「ちょっと待って。カヒム、君に礼がしたいんだが」
「それなら、世界で一番いらないものをちょうだい」
「いらないもの……なら、これをやろう」
ジェリコは鞄から、一枚の紙をカヒムに渡します。
「ジェリコさん、これは?」
「請求書さ。もっとも、法に反した内容だから訴えもできない。まったく、いい気味だ。人を人と思わんヤツだったからな」
カヒムはジェリコから、請求書をもらいました。
最初のコメントを投稿しよう!