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カヒムは、紙ペラ数枚の契約書をひらひらと揺らします。
これが、世界で1番いらないものなんだろうか。
はぁーとため息をつき、どうしてだか彼はつまらなく感じました。
それから、カヒムは電車の最寄り駅に行きました。
駅構内はたくさんの人でごった返しています。
そんな彼の前に、立派な背広を着たビジネスマンが現れます。綺麗な七三分けをしていました。
「おい、坊主。何してるんだ!その用紙……ちょっと貸してくれ」
「いいよ」
紙切れの中身を読み始め、真剣な目つきでカヒムに言いました。
「なんだこれは、契約書じゃないか。この会社に連絡しないと……ところでどうして、坊主は契約書持ってたんだ?」
「くれたんだ。くれた人は困ってないって言ってたし、その紙は法に反しているって」
カヒムの答えにビジネスマンは思わず、大きな声で怒鳴ってしまいました。
「何言ってるんだ、この紙切れ発行した会社は困ってるだろ。たとえ法に反していようが、仕事はちゃんとしなければならん……」
「そうなんだ……じゃあ、この紙は世界で一番いらないものじゃないんだね。
今僕は、世界で一番いらないものが欲しくて探してるんだ。さっき、疲れてたお兄さんからいらないって言われてもらったんだけど……これおじさんにはいるものなんだよね……突然だけどおじさん、世界で一番いらないものってある?」
水色のワイシャツに金色のネクタイをした大人の男は、口をあんぐりさせます。
「……うん?つまり、俺の中で一番いらないものが欲しいのか。変わったやつだ。……まあ、過程は置いといて、結果だけ見ればお前はいい事をした。坊主、ならこの『ディナー券』をやるよ」
それは、この界隈で一番豪華な料理店のディナー券でした。
「おじさんは誰かと一緒に行かないの?」
「俺は仕事が恋人だからな。手に置いとくのも苦痛だ。くじで当たって使いどころがなくてな。じゃあ、俺は今から契約書の発行元に連絡してくる……坊主、あばよっ」
仕事が恋人。一体どう言う事なんだろうと、カヒムは男に聞きます。
「おじさん、仕事が恋人ってどんな意味?」
「さあな。答えてもいいが……坊主にゃぁ、早い」
「え、そうなの?」
「とりあえず、その券で誰か気になってる子誘ってきな。話しはそれからだ……んじゃな!!」
カヒムはディナー券をもらいました。
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