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「では私は帰らせてもらう。受付の任務が私を待っていることだろう」
ミストレスは意気揚々と帰還の護符を掲げ、足元に帰還の陣が描かれると同時に姿を消した。
「ったく、帰るのだけはいつも早いな。おっと、エリシアといったか。ナイスファイトだったぜ」
ゲイリーは親指を立て、ミストレスの後を追うように帰還の護符を掲げた。他の教官はいつの間にか姿を消しており、試練の間にいるのは私たちだけだった。
「あれ? 俺のバッヂは?」
そういえばロイも六年生だった。瀕死とはいえ、勝利したのだから卒業の権利がもらえるはずだ。
「あ、ここに二つあるよぉ。はい」
「おお、よかった。もしかしたら俺だけもらえないのかと思ったよ」
「それなら校長を叩き起こせばいいだろ? どうせ、受付で寝てるだろうし」
ウィルバーはやれやれと身振りを交えてポケットから帰還の護符を取り出した。
「俺たちも帰ろうぜ。流石に疲れたわ」
「そうだね。……あ!」
エリシアは帰還の護符を掲げようとする私たちを呼び止めた。両手を後ろに回し、もじもじしながら上目遣いで私たちを見たのだ。
「卒業試験、手伝ってくれてありがとう。もし、何かあったら今度はわたしが皆を助けるからね」
と言いながら、エリシアは顔を赤らめて帰還の護符を掲げた。その瞬間に彼女の姿は地上に吸い込まれるように掻き消された。
「これが俗に言うデレというやつだな」
ウィルバーは自信たっぷりにそう言い放つが、ロイは「デレってなんだ? 食べ物か?」と相変わらず呑気な返答をした。
まぁ、私も帰ることにしよう。
自分の部屋の前に戻ると、エリシアが扉に背中を預けてうずくまっていた。
その理由を問いただそうとしたが、試練の間の前でエリシアは銃の弾のためにお金を使い果たしたと告白していたのを思い出した。
つまり。
「お金ないからしばらくご飯作ってよぉ。焼肉すら買えない」
「銃売ったら?」
「やだぁ」
やれやれ、厄介な荷物を抱えてしまったな。
(ΦωΦ)続く
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