夢の続き

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 レベル5の雰囲気は空洞をくり貫き、地底湖と東西南北の泉で構成された戦闘フィールドだ。  地底湖にはどう見てもタコにしかみえないクラーケンが潜んでおり、5年生から昇級するにはこいつを倒さなければいけない。  このクラーケン、中々の強敵で湖が満水のときは縦横無尽に暴れまわり、訓練生の次々と凪ぎ払い、彼等の昇級を阻んでいる。しかし、東西南北の泉の門番を倒すと湖に流れ落ちる水を制御できるため、クラーケンは身動きが取りにくくなり、結果、倒しやすくなる。 「もう500単位取れてるから直行よ直行」 「おい、一番強いクラーケンじゃないか」 「大丈夫大丈夫。三人よれば文殊の知恵っていうじゃん」 「それ、戦闘時に言うもんじゃないだろ」 「うるさいなぁ。ウィルバーくんがひたすら耐えてくれたら後ろからしっかり攻撃するから」 「……ハァァ。分かったよ、俺は前でひたすらタコの相手をしておくよ。あ、ネコはどうするんだ?」  唐突に話を振られ、私は右手に持っている得物を彼らの前に突き付けた。槍である。 「槍か。しかもそれ、なかなか面白い武器じゃないか」  そう、これはただの槍ではない。槍の穂先からやや下がったところに斧の刃が付けられている、通称ハルバードだ。突きに加え、凪ぎ払うことにも長けた一石二鳥の武器である。だが、デメリットもある。かなりの重量がある。 「しかも防具はインペリアルガードか。確か、槍特化だよな」 「そういうこと。中距離アタッカーというわけだ」 「いいねいいね。ま、俺は近距離アタッ……ディフェンダーだな」 「分かってるじゃないの」 「ああもう、いちいち突っ掛かってくるなよ」  さすがのウィルバーも眉を潜めて鬱陶しそうにエリシアを追い払おうとする。その素振りを見て、彼女も露骨に嫌な顔をする。 「ウィルバーの癖に。あたしは後ろで炎属性の術をバンバン使って焼きダコにしておくよ。もちろん、戦闘前はイチゴゼリー」 「あ、俺何も持ってきてない」  そういえば、この世界は調理したフードに不思議な力が宿るようで物によっては筋力が増強されたりタフになったりする。その原理は分からないが有利になる手を使わないわけにはいかない。
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