10人が本棚に入れています
本棚に追加
食堂をざっと見回し、知り合いはいないものかと生徒の顔を伺ってみたが、どうやら見知った顔はいないらしい。思えば、知り合いなんて、ウィルバー、メリル、ミーアぐらいなもので、一般生徒と訓練に出掛けたことなんて一度もないと思い出した。どちらかと言うと個人行動が多かったかもしれない。
それなら、私はどうやって学年を上げたのだろう。
「ねぇねぇ」
テーブルで頬杖を付いていた私の肩が何者かに小突かれ、そのままの姿勢で振り向いた。
そこには真紅の髪の少女が立っており、銃口をこちらに向けて「バーン」と言っていた。
うん、何も見なかったことにしよう。
私は自然に首を戻し、空っぽの食器を持ち上げて何事もなかったように食器返却口へ向かう。
「ちょっと! 無視しないでよ!」
真紅の少女が慌てて追い掛けてきて、その存在を知らしめるように私の進行を妨害する。
背は私より頭一つ分低く、顔は童顔だ。髪型はショートボブで目元が髪で少し隠れている。私より年下の可能性は高い。見た目は学園指定の制服を着用しているので突然現れた風来坊ってわけじゃない。しかし、めんどくさいことに巻き込まれそうな気がするなぁ。
「そんな鬱陶しそうな顔しないでよ」
「えぇ……遊ぶなら校庭であそんできなさいな」
「私のほうこそ、えー!だよ。遊んで欲しいわけじゃなくってさ。そう、一緒に訓練施設行かない?」
「行かない」
私は抑揚のない返事と小さな欠伸をして宿舎へ戻ろうとする。だが、少女は諦めていなかった。私の進行方向へ駆けていくと、食堂の入口の扉を閉めて鍵を掛けてしまった。
「それ、他の人が出られないんじゃない?」
「訓練施設行こう?」
聞く耳持たないな。しかし、朝食を食べ終わった生徒が何事かと次第に集まってくるのも事実だ。
「はいはい。分かりましたよっと」
「分かればよろしい」
なぜ、上から目線なのか。
真紅の少女は私の返事を聞いて素直に扉を全開にして何事もなかったようにニコニコと笑っていた。
「私じゃなくても生徒はいっぱいいると思うが」
「だって貴方卒業生じゃない。強い人に寄生したほうが簡単に試練をクリアできるでしょ?」
最初のコメントを投稿しよう!