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なるほど、寄生か。
パーティを募るとき、同じ学年の単位いくつぐらいのと指定した割には、明らかに能力的に優れない初心者がやってくるときが多々ある。見た目は同学年でも技量が低く、装備もイマイチ。こちらは苦労ばかりする。
さて、この少女は自ら寄生と公言しているが、実力のほどはどうなのか。
「それにしても私が卒業生だとなぜ分かったんだ?」
実際のところ、私がいまどの学年なのか分かっていないのだが、少女は私を卒業生と呼んだ。つまり、私を卒業生たらしめる要素を掴んでいることになるが……。
「だって貴方、制服の襟に卒業生の証のバッヂを着けてるじゃない? それ、飾りだと思ってるの?」
そう言われて首を曲げた拍子に見えるように襟を弄ってみた。確かに、星形で縁が金色のバッヂが襟に付けられている。おまけに"Ⅶ"と刻まれている。
「記憶があやふやでね」
「ウソ」
事実だ。しかし、知ってて当然なことなのだろうから何を言っても言い訳になるだろう。
「で、どのレベルに行くんだ?」
「あっ、行ってくれるの?」
「肩慣らしだよ」
「そんなこと言ってー、私が可愛いからって良いとこ見せようとして張り切ってるとか?」
「……やっぱり辞めようかな」
「ちょちょちょ、行ってくれなきゃ困るよ。いつまでも5年生なのは困るしぃ」
「私は困らないけど?」
「貴方性格悪いわね?」
「ご名答」
「とにかく! 十分後に訓練施設レベル5の前まで集合。いい?」
「はいはい、分かりましたよっと」
「あ、自己紹介しておくね。私の名前はエリシア。得意な武器は銃で、術は光と炎属性がそれなりに使える」
光と炎か。それにしても何故銃なんだ。マイナーすぎるだろう。
「私の名はネコ。タマとか言ったらシバくよ」
「言わない言わない」
「斧、槍、闇、冷気が使えると思う」
「思うってのは?」
「記憶があやふやでね」
「またそれ」
「まぁ、卒業できる実力があるんなら何とかなるんじゃないかな? たぶん」
「なんか信用できないわね」
「じゃあ、ウィルバーでも誘う? 壁があるのと無いので違うと思うが」
「賛成。さっそく誘ってこないと。あ、10分後だから」
「はいはい」
エリシアはウイルバーを誘うために猛然と宿舎へと向かった。つむじ風のようだ。
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