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「お? 大きく出たな。よーし、そこまで言うなら俺は後ろで待機してるぞ?」
「ああ、いいよいいよ。ゆっくり休んでいいよ」
「大した自信だなぁ。7年生とはいえ、レベル6の訓練施設が余裕ってわけじゃないだろう?」
「まぁね。とりあえずこの青龍槍は暫くお預けだ」
「それ、そんな名前なんだぁ。ホウキかと思ってた」
エリシアは私から青龍槍を受け取ると、特殊な形状をした穂先をじっくりと眺めてコッソリ「コキュートス」と唱える。
すると、キィンと耳をつんざくような音が響き、青龍槍の穂先が青白く明滅し、槍の穂先から氷の刃が伸びた。だが、すぐに消えてなくなる。
「え? 冗談だったのにコキュートス出ちゃった……」
「そりゃー冷気属性の媒体と魔力とコキュートスのイメージがあればできるだろう」
「え? そういうものなの? 魔力とイメージさえあれば使えるの?」
「使えるよ。知ってさえいれば」
「じゃあ、ネコさんに全ての冷気の術を実演してもらったらわたしも自動的に冷気属性の術をマスターしちゃうってこと?」
「忘れなければ」
「うっ……」
「たった一度見ただけで記憶できるならマスターできるよ 」
「……や、やっぱり無理かも」
「ですよねー」
「じゃあじゃあ、しばらくしたらコキュートスのイメージを忘れるから、忘れたときに詠唱しても何も出ないってこと?」
「たぶん」
「そんなぁ、じゃあ、結局覚えるまで何度も練習しないといけないんだね」
「そういうことかな、たぶん」
「そっかー」
エリシアは落胆すると、青龍槍を私に返して再び壁にもたれかかった。さっきコキュートスを唱えたときに魔力を消費したせいでさらに疲れが溜まったようだ。
「はぁ、余計に疲れちゃった。しばらく戦わないでおこうかな」
エリシアの嘆きにウィルバーも同調する
「俺も少し休みたい。まぁ、敵が襲ってきたらネコとロイが倒してくれるみたいだし、俺たちは後ろで眺めておこうぜな」
「え、俺とネコさんと二人で? そりゃ、いくらなんでもキツくないか?」
不満を口にしたロイだが、ウィルバーに比べると力が有り余っている。積極的に戦闘しないことが疲労感を感じさせないと本人は気付いていないが、自分がメインアタッカーとなるとやはり気後れするようだ。
「じゃあ、ロイはネコの支援というのはどうだ?」
「それならやるよ。ネコさん、ネコさんの背中は俺が守るよ」
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