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そんなところで敵の襲撃がぴたりと止まった。気づけば、目の前は色とりどりの装飾をあしらった豪華な木造扉だった。あとは豪奢の鍵を金で施された無駄に豪華な鍵穴に差して捻る、そこまできていた。
「さて、乗り込むか」
ウィルバーが先頭に立ち、扉の取っ手を握る。
「まて、ウィルバー。作戦を考えてないじゃないか」
すると、彼はハッと動きを止め、できる限りのスマイルでこちらを振り返った。そんな顔で誤魔化されと思うのか。
「いやー、この勢いでいけるかなと」
「いや、流石にこのまま突っ込んだら返り討ちに遭うだろう」
「そんなに強いの? 初見だと負けちゃう?」
「戦い方次第かな」
「だけど、ここのボスって教官たちだろ? レベル5みたいな巨大なタコじゃないし、レベル4みたいに暑苦しくもない。どちらかと言えば戦いやすいはずだ」
そう力説するウィルバーの顔は暑苦しい。玉のような汗をかいているからだ。
そこへ、ロイが無言でタオルをウィルバーに渡した。意外と気が利くようだ。
「熱いならアイスストームでも唱えるが」
「じゃあ、わたしはファイアストームを唱える」
「そして、俺が黒こげになるっと」
「めでたしめでたし」
「めでたしめでたしじゃねぇ!」
声を荒げるウィルバーは再び顔いっぱいに汗をかいた。流石に疲れたのか、床に腰を下ろして剣の手入れを始めた。
「作戦会議ー!」
エリシアは声を高らかにあげて床に荷物を下ろす。しかし、彼女の荷物は精々杖と焼肉ぐらいだ。
「俺の荷物も似たようなもんだよ」
ロイはそう言いながら鞄の中から紙包みに包まれたハギスのパイを見せた。
「ま、負けたぁ」
「いや、荷物の中身で勝負してないけど」
ロイは目の前で床にひれ伏すエリシアを見て慌てている。
そんなこと言ったら私はどうなるのか。拡張に拡張を重ねたこのバッグ、所持できるアイテムは五十を超える。
「俺は剣と調理調合ツールと食い物と回復薬や解毒剤かな。長期間施設に潜る場合に備えてツールは常に持ってきている。でも、あまり使うとこないんだよなあ」
「ネコさんは?」
「ん? 知ってるくせに何故聞く」
「えへへ」
エリシアは腕を伸ばしてストレッチを始めたかと思うと、バッグを枕にして寝ころんでしまった。
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