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急いで部屋に戻った私は、壁に立て掛けてある武器を眺め、防具をどれにするか数秒悩んだ。槍か槌か、それとも杖か。
ん? こんな選び方してたか?
予想されるパーティ構成は、銃もしくは術を使うエリシア。つまり、中遠距離。ウィルバーは言わずもがな、それなら私のポジションは……。
時計を見ると待ち合わせの時間まで5分を切っていた。迷っている暇はない。
今回は、これだ!
訓練施設は宿舎からそう離れていない。街からやや奥まった辺りにあるが、地上からは巨大な施設は映らない。目にするのは、およそ学校らしい風体の施設で各教室は専門の講義部屋となっていた。
入口は校舎の地下にあった。地下へ下りる螺旋大階段には、早朝だというのに生徒の姿がチラホラあった。紛れもなく私もその一人で、各階層毎にある踊場からナンバリングされている数字を見やって目的地へと向かう。
「遅い!」
真紅の少女が拳を握りしめ、私の姿を確認すると同時にフロアに響き渡るほどの声で叫んだ。
「間に合ったはずだが」
「30秒の遅刻よ」
「細かいなぁ」
エリシアの隣には、まだ眠気眼のウィルバーがぼーっと突っ立っていた。寝ているところを叩き起こされたらしく慌てて準備をしたようだが、鎧はずれているし頭はボサボサという散々な有り様だ
。
「今日は何も予定を入れてなかったのに」
ウィルバーの不満ももっともである。だが、彼の安眠を妨害した要因は自分の一言なので、ここはだんまりを決め込んでおく。
「ウィルバーくん」
「ふぁい」
「貴方の役割は壁です。肉壁です」
「……面と向かって、お前は壁だなんて初めて言われたよ」
「ウソ! 高性能肉壁ウィルバーって噂されてるじゃない。その背は、とある人を守るためにあるんでしょ?」
「とある人って?」
「メリルでしょ?」
「ななななななな、なんで知ってるんだよ」
「誰にも知られてないと思ってるキミの反応に逆に驚くよ!」
「何故だ? 俺は迂闊な振る舞いをした覚えはないぞ?」
「はあ、知らぬは本人ばかりなり。まぁ、相手も全く気付いてないんだから似た者同士だよね」
「お、おい。誰のこと言って」
「もぉ、いいからいいから。早くボス倒しにいこ」
エリシアは呆れ顔で帰還の護符を受け取り、レベル5と書かれた扉を開けた。その後ろを追い掛けるようにウィルバーが扉の向こうに消え、私も後に続いた。
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