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しばらく考えた末、エリシアは立ち上がって背中に手を回した。
「よし、決めたっ! わたしは銃を使う!」
そしてスカラーブレザーの裾から取り出したのはサプレッションマシンガンという速射性能のいい銃だった。
「ここで銃!?」
「だめなの?」
「いや、良いけど」
「うふふ、これ両手取られるけど、ガンガン弾を撃ち出すから相手をびっくりさせれるの。銃使ってる人ってほとんどいないでしょ。だから、びっくりするんじゃないかな」
「弾代が凄そうだね」
「うん! だから、卒業したらまたバイト行こうね」
「……ふむ。それで肝心の作戦は」
「作戦はテキトーでいいんじゃないかなあ。各自、自分の判断で敵を倒すべし! なーんちゃって」
「なんか真面目に解説したのが馬鹿らしくなった」
「でも、卒業する気は満々だよ。ちょっと奮発して弾を二百発買っちゃったもん」
「つまり、後がないわけだね」
「そう! 作戦名、背水の陣!」
一人盛り上がっている彼女をよそに、ウィルバーとロイは呆然と見つめていた。二人とも後ろから術で援護してくれると思っていただけにショックが隠しきれないようだ。
「俺、銃使いとチーム組んだことないぞ」
「俺もないなぁ。でも、なるようになるんじゃないかなぁ」
「ロイは呑気だなあ。精々撃たれないようにしないとな。当たると痛いで済まなさそうだ」
そして、作戦会議はエリシアのいい加減さで幕を下ろした。しかし、すぐに乗り込むわけではない。
「戦闘前にしっかり腹ごしらえしよう。俺は当然ハギスのパイだ」
ロイは嬉しそうにパイを口に運び、すぐに平らげる。しかし、一個では足りないようで、もう一つを食べ始めた。
「じゃあ、俺はマトンサンドイッチ。手軽さが良いところだ」
「私は蓬莱梅干しでもつまんでおくかな」
「え、なんでみんな良いもの食べてるの。私の分は?」
「焼肉あるじゃないか」
「ええー、こここれは非常食だから」
「……そんなに欲しいならこのお団子でも食べるといいよ」
「なにこれ」
「マフマフマフフマ」
私はエリシアに薄緑色の団子を渡した。甘党の私が食べたいところだ。
「ありがとう、ネコさん。あ、甘くて美味しいー!」
「喜んでもらえて何より」
「よーし、絶対卒業するから」
そして、エリシアは豪奢の鍵を鍵穴に挿し入れ、静かに扉を開けたのだった。
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