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扉の先は礼拝堂だ。
高い天井とそれを支える太い柱が所々に立っている。奥を見やると十字架のようなものや、長椅子が何列も並んでいた。
礼拝堂の中心に三人の教官といつか見た受付嬢が立っている。
怪しげな薬を手にしたメディア。
魔力を宿した杖でこちらを見据えるバルザック。
金属製の全身鎧に身を包むゲイリー。
それにエプロン姿で大剣を担ぐミストレス。こんななりでも学園の校長だという。
四人は待っていたというより、待ちくたびれたといった面持ちで私達が準備するのを見つめている。
「おいおい、戦闘前に呑気に飯なんて食ってるんじゃねーぞ」
ゲイリーは早く戦ろうぜと言わんばかりに斧を担ぐ。彼の身長とほぼ同じぐらいの長さの斧はいかにも威力が高そうだ。
「べ、べつに急ぐ必要はないと思います。戦闘前の作戦会議もあると思いますし」
メディアはゲイリーをなだめた。だが、それで聞くような男ではない。
「そーいや、さっき作戦会議とか聞こえたな。丸聞こえだったぞ」
ゲイリーはにやりと笑う。その笑みにエリシアの顔がひきつった。
「儂はもう寝たいんじゃが」
バルザックはしわくちゃの顔で欠伸をして目尻に涙を浮かべていた。
じゃあ、寝てください、そうすれば倒しやすくなるので。
ミストレスは沈黙している。彼女は便宜上試練の相手をすることに心底面倒なようで、今すぐにでも帰りたいオーラを醸し出している。
「ささ、もうおしゃべりはいいでしょう。例の如く、戦闘開始の合図は私が出します」
ミストレスは気だるそうに大剣を構える。殺気はない。だが、その姿勢に危うく騙されると、痛い一撃をもらってしまう。現に、ロイとエリシアはまだ武器を構えていない。
何度も見ているウィルバーと私は武器を構えて次の言葉を待った。他の二人には敢えて声を掛けないでおく。
「いきます」
押し殺したような声と共にミストレスは素早くこちらに近づき、エプロンのフリルを揺らしながら剣を大きく振り下ろした。
「はぁっ!」
ウィルバーは下から剣を振り上げ、大剣を受け止める。できれば、切り払いたいところだか大剣はやはり重たいようだ。
「二人ともボサッとするな!」
ウィルバーは二人に喝を入れると、一歩後ろに下がって大剣を受け流した。
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