10人が本棚に入れています
本棚に追加
これで数の上では有利になった。
しかし、ウィルバーはミストレスで手一杯だし、ロイとエリシアが二人がかりでゲイリーと戦っている現状だ。つまり、一人ぐらい倒したところで楽になったわけではなかった。
「校長、援護します」
茶色の三つ編みをしたメディアが後方から飛散回復薬を投げる。それはミストレスの頭上で拡散し、彼女の傷を癒したのだ。
これでウィルバーの苦労は水の泡と化す。だが、ミストレスと接戦をしていたウィルバーもその恩恵を少なからず受けることとなる。
「これで振り出しに戻った。タイマンはちょっとヤバかったんだよなー」
ウィルバーは力強く剣を振り回し、ミストレスの大剣を弾き返そうとする。だが、振り出しに戻ったのはミストレスも同じなのでズルズル行けばウィルバーが打ち負けるだろう。
「ウィルバー、手を貸すよ」
ミストレスに接近しながら両足に意識を集中させる。短期的だが脚部の技法"スピードアップ"で相手の不意を突こうという作戦だ。
だが、ミストレスは片足で床を思い切り踏み、私が近付く前に横方向へ移動した。
読まれていたか。
「ゲイリー」
「おおう?」
「一人じゃ辛いので剣と槍使いを受け持ってくれないですか?」
「おい! 俺は既に斧と銃使いを受け持ってるわ。俺の負担がさらに増えるだろうが!」
「ゲイリー、作戦があります。数秒だけでいいので受け持ってくれないですか?」
「作戦だぁ?」
怪訝な顔をするゲイリーは、横っ飛びで近づいてくるミストレスからなるべく離れようと移動する。これはむしろ、ミストレスが四人を受け持つような立ち回りだ。
「俺が受け持ってる間に帰るつもりだろ? そうはさせねぇ!」
ゲイリーはさらにミストレスから距離を取り、私たち四人の視線の先にミストレスを追い込んだ。これでミストレスは一対四を強いられる。
最初のコメントを投稿しよう!