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「ゲイリー! 話が違いませんか!? これではあべこべです!」
ミストレスは遠ざかるゲイリーに非難の嵐を向けるが、背後に近付いたウィルバーの気配を察し、華麗にターンした。
翻るフリルのついたスカート。
ミストレスは踊るようにステップを刻み、巨大な剣をウィルバーに振り下ろす。
金属同士が擦れ合い、一瞬火花を散らし、剣同士が弾かれる。
そこへ斧をぶん回すロイの一撃に見舞われるが、刃が一歩及ばず空を斬る。
「二人とも退いてー!」
エリシアはサプレッションマシンガンの銃口をミストレスに向けるものの、ロイとウィルバーが人間の盾となり、引き金を引くことができないでいる。
ウィルバーは背後をチラリと振り返ると、直ぐにエリシアの直線上から離れようと移動する。だが、それを見切ったミストレスが再び直線上に並ぶように移動するのだった。
「流石に肉壁と呼ばれるだけはありますね。味方ならず敵までも守るその姿勢。いやはや、恐れ入ります」
「くそっ。エリシア! 俺が動いた瞬間に撃て! それしか方法がない!」
ウィルバーはフェイントや反復横跳びを織り混ぜ、巧みにミストレスを出し抜こうとする。
「う、ウィルバー! 大変だよ!」
「なんだよ!」
「弾切れになっちゃった」
「ちょ、わざわざ情報を知らせなくても」
「あ」
これで実質、エリシアは戦力外となる。ミストレスもそれを理解して、彼女に背を向け、ロイとウィルバーに斬りかかった。
そのとき、私は槍を立てて上空を突くような動作を行った。その行為にミストレスが不審がったが、何の効果もないと分かると私の姿を視界に収めるような立ち回りで剣を振り回そうとした。
だが、その瞬間。
ミストレスの後頭部に何かがぶつかり、彼女は目を見開いたまま崩れ落ちた。
「どうした、ミストレス!」
ゲイリーが慌てて駆け寄る。だが、ミストレスの後ろに転がっているモノを見て何が起きたか直ぐ悟った。
「えへへ、遠距離攻撃は得意なんだぁ」
なんとエリシアはサプレッションマシンガンのベルトを掴んでその場で回転し、遠心力をつけて投擲したのだ。
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