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ミストレスは倒れ伏したままだ。起き上がる気配がない。急所に当たって気絶しているのか?
いや、どうやら違うらしい。ゲイリーが眉を潜めて睨んでいる様子から、死んだふりをしているようだ。
「チッ、なかなかやるじゃないか。だが、このゲイリーはこんなサービスはしてやらないぞ?」
言うが早いか、ゲイリーは同じ斧使いのロイを標的にして素早く近付き、斧で一薙ぎにする。
ロイは慌てて手持ちの斧の刃で受け止めようとするが、ゲイリーは刃同士が当たる直前で勢いを殺し、鍵状の刃で彼の斧を引っ掛けたのだ。
思いもよらない搦め手にロイは動揺し、思わず斧の柄を握る力を緩めてしまった。そのお陰で柄が握りこぶしからすっぽ抜け、斧を床に落としてしまった。
「あんのやろう!」
ゲイリーに言ったのか、ロイに激昂したのか、それは分からないが、ウィルバーはゲイリーの胸を切り裂くように振り下ろす。
だが、鎧は分厚く、衝撃すら与えていない。
もちろん、私も加勢する。槍で刺したところで鎧の鋼に弾かれるだけだが、何もしないわけにはいかない。
「メディア! 支援してくれ!」
それまで蚊帳の外にされていた彼女だったが、ゲイリーの叫びに我に返り、飛散回復薬や炸裂爆雷などを指の股に複数挟み、急いで駆けてくる。
不味いッ!
ゲイリーに対し、有効打が与えられない状況で体力を常に回復させられたら、実質二人のこちらは分が悪い。どうにかしないと……。
「ゲイリーさん、後ろに下がってください。飛散回復薬を投げます!」
「ありがたい!」
ゲイリーは叫ぶと同時にバックステップでメディアの傍へ近付こうとする。
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