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だが、突如、二人の袂を分かつように現れた炎の柱に彼らは呆然と立ち尽くした。
「させないよー! ファイアランス!」
なんとエリシアは、今回使わないと決めたはずのルビースタッフで攻撃を仕掛けたのだ。
炎を纏った槍が即座に形作られ、杖を振り下ろす動作と同時にゲイリーに炎の槍が飛来した。
「 おい、武器を持ち換えるなんて有りか!? うわっち」
ゲイリーはたった一歩後ろに後退するだけで攻撃を躱そうとする。だが、直進するはずの炎の槍はゲイリーの移動先へ追尾したのだ。
「有りだよ! もし、デモノイドに襲われたときに武器の一つが壊れたから諦めますなんて、そんな考えじゃデモノイドを滅ぼすなんてできない! 力があるのならなんだってしないと!」
エリシアは必至の形相で魔力を杖の先に集め、火球を形作ろうとする。しかし、杖の先にモヤモヤした魔力の源のようなものが集まるだけで、火球はなかなか具現化されない。
「だめ、魔力が、足りないよぉ!」
試練の間に着くまでに彼女の魔力は残り少なくなっていたようだ。魔力が枯渇しているから銃を選んだ、と一言言ってくれればいいのに。
それでもエリシアは額に汗を浮かべながら搾るように魔力を集めようとする。その努力を、決意を無駄にするわけにはいかない。
「ウィルバー! なんとか時間を稼ぐんだ!」
「おう! いくぜ、おらぁ!」
ウィルバーは深く腰を落とし、渾身の力で剣を素早く振り上げ、直ぐに振り下ろす。
月の円環を描くような軌跡を思わせる剣技、ダブルクレセントだ。
「止めのファイアーボー……ううっ、ダメ。魔力が足りない……。ファイアーボールさえ作れないなんて……」
杖の先には拳ほどの火球が燃え盛っていたが、魔力の供給力が弱く、次第に火力が衰えていく。
「ふ、その意気込みだけは褒めてやろう。だが、俺を倒せねば、お前は口だけだったということだ」
ゲイリーは素早く屈み、ウィルバーに足払いを掛ける。予想外の攻撃にウィルバーは尻餅をついてしまった。
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