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「よくやった、アークディスプレイサー」
私は巨大な黒豹に跨り、眼下へと目を凝らした。
このペットは類い稀な跳躍力を有している。炎の壁が押し寄せる瞬間、私はこのペットに天井付近まで飛び上がってもらったというわけだ。
無難に床へと着地した私は、サファイアスタッフを取り出し、部屋全体にコールドフォースを展開する。おそらく火傷を負って、身動きできないはずだ。さらに、メディアが隠し持っている飛散回復薬を彼女の腰に付けているポーチの中から取り出し、各々に向かって投げる。これでいいはずだ。
「う……あれ? わたし、倒れてる。なんで?」
最初に目を覚ましたエリシアは両手を付いてゆっくり体を起こす。彼女の隣には炭化したパイが落ちていた。
「エリシア、まさか敵味方を巻き添えにするとは思いも寄らなかったよ」
「ふぇ?」
エリシアはまだ意味が分かっていない。辺りを見渡して全員の様子を窺っている。
「フレイムインフェルノは地上に立つ者すべてを焼き尽くすんだよ」
「えええええええええ!?」
エリシアは愕然とし、放心状態に陥った。いま、彼女の頭の中では味方の姿が炎で焼かれているシーンが想像されていることだろう。
「ウィルバー! ロイさん!」
エリシアは二人の元へ駆け寄る。しかし、彼女が辿り着く前に二人は自力で起き上がり、エリシアに非難の眼差しを向けた。
「おぃぃぃ! 丸焦げになるところだったじゃないか!」
「ごめーん。まさか敵味方関係なくとは思わなくて」
「あれ? なんでネコは無傷なんだ?」
ウィルバーは私を指さし、怪訝な顔をした。
「ジャンプで避けた」
「ズルいぞ、自分だけ」
「お蔭で全滅しなかった。全滅したらやり直しだからね」
「あ、そうか」
合点がいったようでウィルバーはそれ以上追及しなかった。あとは教官たちを起こさないと。
「見事だ!」
最も早く立ち上がったのはミストレスだった。見る限り、外傷は少ない。
「君たちはよく戦った。よって、卒業だ!」
「やったぁ。ついに卒業できたぁ」
「それから、今後、訓練施設を使うときは料金を徴収する」
「ええ!? そんなぁ、わたしお金ないのに……」
「以上だ。なお、卒業証書は発行しないが代わりにこのバッヂを与える」
ミストレスはエリシアに金色に輝く“7”という数字のバッヂを渡した。エリシアはそのバッヂを手のひらに乗せてまじまじと眺めた。
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