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「それで? ああ、この煮物の味付けの事ね? うーん、確かにちょっと変わってるかも」
「いや、これはそれ以前の問題だろ。これ、何か味付けしたのか?」
「え、お野菜の味とか出てるじゃない」
「だから、醤油だの砂糖だの味醂だの使ったのか、て話だよ」
「別に? お水だけよ」
「まあそうだろうね。よくそれで煮物だの味付けがどうこうだの言えたな」
「ふぅ、分かってないわね。素材の味を生かすのがお料理の基本でしょ? 素材の味だけで十分美味しいの」
「お前、今さっき『味がしない』っつって醤油かけてたじゃねぇか」
「あら、個人の好みにまで干渉するのは違うんじゃない?」
「だから、それ以前の問題っつってんだろ。とりあえず話の主導権をこっちに寄越せ。全然展開が進まん」
「? 別にいいけど」
「じゃあ、仕切り直しな」
「はいはい」
「ほんとに変わってるよな、お前」
「なあに、藪から蛇に。褒めても何も出ない…」
「お前はいいんだよ」
「あ、違う違う。知ってる? 『藪から蛇』って、本当は『藪から棒』が正解なんだって」
「今さっき俺が教えたんじゃねぇか。いいから、お前は余計な事を言うんじゃない」
「はいはい」
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