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「お帰りなさいませ、お嬢様」
カランッと、背後で扉が閉まる音を聞きながら、私と陽菜子(ひなこ)ちゃんは固まってしまった。
大学の講義が早く終わった昼下がり。
珍しく二人ともの執事が夕方まで休みを取っていて、二人とも自由になる時間があるから、久しぶりにお茶をすることになった。
だから大学の近くに新しくできた『執事カフェ』とかいう、今大学で話題になっている店に入ったのだけど……
「……周防(すおう)?」
慇懃に頭を下げて私達を迎え入れたその人が、陽菜子ちゃんの言葉に弾かれたように頭を上げた。
綺麗に整えられた黒髪に、冷たささえ感じさえる端正な顔立ち。
理知的な印象を強めるメガネの奥の瞳が、驚愕に見開かれている。
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