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この世界には時の経過を決める基準がない。
夜と昼の一日がない。時を刻む時計もない。健太の腕時計も止まっている。
ドゥンヌの世界にも時間の概念はあったが、この世界に来てからどのくらい経過したのか分からなかった。
時間に縛られるのが当たり前な世界に生きて来た健太には、時間が判然としないこの世界は苦痛であった。
だから大まかではあるが、感覚的に一日が経過したと思ったら、いつも持っている手帳に、正の字を書いて記録することにした。
健太達は、出口を求めて歩き始めたが、周囲への警戒は怠らなかった。
ドゥンヌは敵からの急襲を避ける為に。
健太は敵に会った時に、戦闘ではなく、話し合いへの先手を打つ為に。
健太には考えが有った。
以前と同様に何の手段も持たず、闇雲に歩いても意味がない。
この世界にいる他の人間に会って、情報を集め出口を探す。
他の人間もこの世界に迷い込んだ。
だから俺達と同様に自分の世界に帰りたい筈だ。
利が一致する。仲間になれる。
仲間は多い方が良い。早く敵に会いたいと健太は思った。
2人の脳が危険信号をキャッチした。
慎重に辺りを見回した。健太はドゥンヌを見た。
ー誰だか分からない奴とテレパシーが出来るか?ー
ーやったことがない、分からないー
健太はスピーカーみたいなものかと思い、音量を上げるように、強く思い、脳波
を発信してみた。
ー誰かいるか? 俺達は敵じゃない、姿を見せろー
辺りを見回した。何の反応もない。何度も発信した。
危険信号が複数になった。
しばらくして、突然岩陰から二人の人間が出現して、こぶし大の石を投げ付けて来た。
野球であったら、140キロ台の速球だ。
格闘家の健太と戦士のドゥンヌの反応は早い。
難なく速球をかわした二人は攻撃に転じた。
とても話し合いの出来る状況ではない。
右側の敵には健太が、左側の敵にはドゥンヌが対した。
健太の相手の身長は健太より少し小さい程度、身長的には互角であったが横が太い。
健太は突進した。相手も突進して来た。
両者とも勢いを落とさない。
そのまま衝突すると見えた瞬間、健太は右に体を変化させた。
体当たりして健太にダメージを与えて優位に立とうして満身の力を込めていた相手は、対象を失い勢い余って健太に背を向けた。
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