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健太はその一瞬を逃さず、強烈な蹴りを後頭部に打ち込んだ。相手は前のめりに倒れ、顔面をしたたか打って気絶した。
ドゥンヌの相手の身長も、もう一人の相手の身長と変わらず、大人と子供との戦闘のようだったが、ドゥンヌの素早さが遥かに勝った。
獰猛な猛獣のような身のこなしと、獲物を捕らえる狡猾さを持ち、戦闘能力の高いドゥンヌは精強な戦士だった。武器を持ってはいないが、鋭い爪と歯が武器の役目を果たして余りある。
健太とは逆にドゥンヌは逃げるように、後ろに走り出した。相手は逃すものかとドゥンヌを追った。
ドゥンヌは自分の能力の半分程度の速度で走った。相手はドゥンヌの背後に迫った。横に長い楕円状の石を右手に持っている。打撃用の武器だ。
相手が石をドゥンヌの後頭部に打ち下ろそうとした。
その時、ドゥンヌの頭が相手の視界から消えた。
ドゥンヌは素早く身を沈め、横這いになり相手の足を刈った。
全速力で走って来た相手はダイブするように、勢いよく前へ飛んで全身を地面に強く打ち、苦痛に呻いた
ドゥンヌは相手の持っていた石を掴み取り、相手の頭を強打した。
鈍い音を残して相手は絶命した。
健太と違い、殺し合いの戦闘に慣れたドゥンヌに容赦はない。
健太は倒した男を観察していた。
赤味がかった膚。
体当たりをしようとしたのが理解出来るような、どっしりとした体形をしている。
あまり敏捷そうではない。
頭も体も手足も横に大きく、眼、鼻、口も大振りで、全体的に大らかさを感じた。
この男の個性か、この男の世界の人間の特徴かは分からないが、攻撃的な殺人者には見えない。
ドゥンヌも戦闘を終え健太のいる所へ戻って来た。
健太はドゥンヌを見て思った。
ドゥンヌも自分を殺そうとした。だが、それは自分を守る為。
戦士には殺し合いは普通のことだが、享楽的に殺人をしているのではない。
倒した相手もそうだったのではないかと思った。
そうであったら、説得出来る可能性がある。
ーケンタの倒した男と俺の倒した男、違う世界の人間、背は同じくらいだが、細くて色が黄色いー
ー俺達のように違う世界の人間で仲間か?ー
ーそうだろうー
しばらくして男が眼を開け上体を起こした。きょとんとして周囲を見回し、健太
達に気付き怪訝そうな顔をして、座ったまま後退りした。
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