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健太は男を見て思念を発した。同時にドゥンヌをイメージして。
ー俺の言葉を感じるかー
男は不思議そうに健太を見ている。健太はドゥンヌを見た。
ーこいつはテレパシーが出来ないようだー
ー出来る、出来なければこの世界で生きられないー
ーだが不思議そうな顔をしているー
ーどうしてか分からない、ケンタの時と同じ、やってみようー
ドゥンヌは健太の時と同様な脳波を男に送った。
男はドゥンヌを見詰めた。
ー思い出した、声出さない、心と心の会話ー
ドゥンヌは健太に男からのイメージを転送した。
健太は脳ではなく、心のイメージに文学的センスを感じた。
ーあんた、俺が誰か教えて、俺何も思い出せないー
男の困惑の気持ちが伝わって来る。
健太はドゥンヌを見た。
ー俺がこいつの頭を強く蹴ったから、記憶喪失になったようだー
記憶喪失のイメージが伝わるか気になったが、ドゥンヌの世界にも記憶喪失は有った。
ー嘘ではないのか?ー
ーテレパシーでは嘘をつけない、気持ちが伝わってしまうー
ーテレパシーがうまくなって気持ちをコントロール出来る奴もいるー
ーそんな男に思えないー
ーお前がそう思う、それでいいー
健太は男を見た。
ー俺達はお前を助ける、その内に思い出せるだろうー
ーお前達は何者?ー
ーこの世界は危険だ、他の人間はみんな敵、会えば殺される、お前は一人でいたら死ぬだけだ、俺達はお前の味方、一緒にいれば安全だー
男は頷いた。
ー名前がないと不便だ、思い出すまで、お前の名前はワスレにしようー
ドゥンヌを見た。ドゥンヌは頷いた。
〈忘れ〉、健太は自分が忘れない名前を思い付いた。
語感も覚えやすい。
健太しか意味を知らないから、健太に男を馬鹿にしたと言う意識は生じない。
岩山の上から健太達の戦闘の一部始終を見ていた者がいた。
その者は岩山から下りて来て、ゆったりと歩き健太達の視界に現われた。
現われたのは黒豹のような動物。
膚が黒光りして美しく、健太の知る黒豹よりかなり大きい。
健太はドゥンヌを見た。
ー人間以外の生き物もいるのか?ー
ー初めて見たー
健太達は新たな敵の、それもとても勝てそうもない敵の出現に恐怖に襲われ、どうしたら危機を逃れられるか必死に考えた。
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