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他の二人にとって畏敬の気持は初めての感覚だったが、健太の気持に染まった。
黒豹は無条件に従う思念が伝わる三人を理解し難かった。
心の中に欲が見えない。有り得ないことに思えた。
ーうまく行ったら元の世界に帰してやるー
健太はドゥンヌとワスレに自分の気持を伝えようと思い二人を見た。
二人は期待に眼を輝かせて黒豹を見ている。
二人も健太を見た。
黒豹を畏敬する強い気持ちが伝わって来る。
健太は思った。黒豹を通じて健太の気持が二人に伝わっていたのだと。
-2-
ー何をすれば良いのでしょうか?ー
健太は黒豹の指示を仰いだ。
黒豹の表情は変わらないが、訝しむ気持ちが伝わって来る。
ーお前は何も考えないで私に従うのか、この世界を消滅させたい理由を知りたくないのかー
ー私はあなたに会って、全ての能力が圧倒的に違う神のような存在を知りました、私のような小さな人間が何を考えても無駄です、神に従うのは当然ですー
ー私はお前の世界の神ではない、今までお前のような従順な生き物に会ったことはない、言うことを聞いても、心の中では従わない、心を持っていたらそれが当然、考えるから生き物なのだー
ー考えるから従うのですー
ーお前は不思議な生き物だ、お前の世界はそのように創られたのだろう、考えるを力のある者に委ねる、正しい一つだろうー
黒豹は体を反転させ、来た方向に歩き始めた。三人はそれが指示だと思い後に従った。
低い岩山が連なり、木も緑もない殺伐たる光景が変化なく続く、道なき道を進んだ。
暫く歩くと百メートル程先に、きょろきょろと辺りを見回し不安げに立っている
人間を見付け、岩陰に隠れた。
この世界で今まで見た人間と違い、ひょろっとして、膚は褐色だ。
黒豹の言葉が来た。
ーこの世界に引き摺り込まれたばかりの人間だ、殺せー
いきなり殺せと言われて健太は反発した。
ーさっきの言葉と違います、仲間にしないで殺すのですかー
ー私に従順に従うのではないのか?ー
ー時と場合によりますー
ーお前が罪悪感を感じるから、都合のいい忠誠心だな、これも欲かー
健太は答えられなかった。
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