第1章

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―優志は,仙台で家族と幸せに暮らしている。彼をワシントン大に誘うのは…,その後も自分とアメリカに留まるように願うのは,俺の,エゴか…?  バスルームから優志が出てきて,また画像みてるの?と笑った。 「…これだけ優志の画像があれば,次に会えるまで我慢できそうだよ」 「卒論と院の試験で忙しくなるから,あんまり見ている暇は無いんじゃないかな?」 「そうだな,ご褒美と考えて控えた方がより燃えるかな…」 「もう…」  赤くなる優志に目尻を下げてから,真顔になってブライスは話題を変えた。 「ところで,優志が進む小型探査機の設計は,チームを組むのか?」  優志はベッドに腰を掛けた。 「今のところ,その研究をしている人は1学年上に一人いるだけなんだ。その人の研究を手伝いながら,2年かけて自分の設計を進めていくと思う」 「担当者は?」 「大学院のロケット工学専門の助教と学部の助手の二人…」 「普通の宇宙航空機とは全く違うから,大変かもしれないな…」 「ん,卒論テーマは主流のはやぶさ2からかけ離れないものにする。その代わり,大学院試験に通ることに力を入れるよ」 「大事だな…」 「さっき言った大学院の助教って,指導者交換でワシントン大学から来ているハーヴィッツ先生というんだけど,とても頼りにしてるんだ。大学院のことも教えてくれて…」 「院の助教なのに,学部生にも教えているのか?」 「小型探査機やロケット工学は指導者が少ないから。留学を予定している俺と遼には英語の論文指導もしてくれる」 「ふーん,その人何歳?既婚?どんな人?」 「…えっ?…んー,35歳くらいで独身かな,学部の女の子に人気があったから。…研究熱心で親切な人だよ。何で?」 「優志…少ない学生と男盛りの助教が濃厚な研究時間を共にするんだ。間違いが起きないように気を付けて」 「何言ってるの,そんなこと絶対にないよっ。変なこと言わないで」 「変なことではない。研究室では特殊な空気と感情が生じるのを,俺は知っている。だから俺は研究室では長時間ふたりっきりにならないように気を付けている。 優志は魅力的で…ある種の男性にアピールするらしい。そのことを忘れないで」 「…わかったよ。俺にはブライスがいるし,他の誰とも変なことにはならないから」
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